高市早苗政権エピソード1:高市首相誕生まで
参議院議員選挙
本稿では高市早苗首相が誕生する過程を議論したい。そのきっかけは2025年7月20日の参議院議員選挙である。この参議院議員選挙で自民党は39議席しか獲得できず惨敗する。石破茂首相は選挙前に「自公で過半数が必達目標だ」と明言していた(『朝日新聞』2025年7月3日)。公明党の獲得議席も8止まり、与党の総獲得議席は47となり、必達目標を下回る。
2024年10月の総選挙でも自民党の獲得議席は過半数を下回る191にとどまり惨敗していた。国政連敗を受け、自民党内から石破茂首相の退陣論が噴出する。例えば、茂木敏充元外相は「リーダーも含めて主要なメンバーを決めて、やり直していく姿が再生のためには必要だ」と自身の動画番組で発言する(『朝日新聞』2025年7月27日。)7月28日には両院議員懇談会が開かれ、多くの出席者が退陣を求める。石破首相は「大変厳しい結果となり、多くの議席を失った。心からおわびする」と陳謝したものの「政治空白を生むことがないよう、責任を果たしたい」と続投を表明した(『読売新聞』2025年7月29日)。
臨時総裁選へ
しかし党内の反発は収まらず、8月8日の両院議員総会で有村治子両院議員総会長が党則第6条4項に基づく臨時総裁選の実施の是非を決める手続きを進めるようを逢沢一郎総裁選挙管理委員長に申し入れた(『読売新聞』2025年8月9日。『共同通信』2025年8月9日)。総裁選挙管理委員会は8月27日には臨時総裁選の実施要求確認方法として、署名・押印した書類を提出することと要求者を公表することを決定する (『朝日新聞』2025年8月28日)。9月2日の両院議員総会では参院選を総括する報告文書が提出された。首相や執行部の責任は問われなかったものの、総会で森山幹事長が辞意を表明する。鈴木総務会長、小野寺政調会長、木原選挙対策委員長も辞任の意向を首相に伝えた。
石破首相退陣と総裁選
その後、自民党の国会議員や県連の間で総裁選前倒しを求める動きが強まり、9月7日、石破首相も観念し、退陣を表明する。自民党は8日に、国会議員に加え一般党員も参加するいわゆるフルスペック型の総裁選を行うことを決める。
9月22日に自民党総裁選が告示され、小林鷹之元経済安全保障担当相、茂木敏充元外相、林芳正官房長官、高市早苗経済安全保障担当相、小泉進次郎農水相が出馬した。
総裁選前の世論調査では高市氏や小泉氏の人気が高かった。9月13日・14日に実施された読売新聞社の世論調査によれば、高市氏支持が29%、小泉氏支持が25%、9月20日・21日に実施された朝日新聞社の世論調査によれば、高市氏支持が28%、小泉氏支持が24%であった。
この総裁選で高市氏は「責任ある積極財政」により経済成長を実現することや「給付付き税額控除」の制度設計に着手することなどを公約として打ち出す。一方、小泉氏は2030年度までに平均賃金は100万円増やす一方、国内投資を135兆円にすること、物価及び賃金上昇に合わせた所得税の基礎控除の引き上げを訴える。
10月4日に総裁選が行われ、1回目の投票結果は次の通りであった。高市早苗氏が議員票64・党員票119の計183票、小泉進次郎氏が議員票80・党員票84の計164票、林芳正氏が議員票72・党員票62の計134票、小林鷹之氏が議員票44・党員票15の計59票、茂木敏充氏が議員票34・党員票15の計49票であった。過半数に達した候補がいなかったため、上位2名による決選投票が行われた。
決選投票では高市早苗氏が議員票149・県連票36の計185票を獲得し、議員票145・県連票11の計156票の小泉進次郎氏を破って勝利する。決選投票では麻生太郎元首相が麻生派所属議員に決選投票で高市氏を支持するように指示した(『読売新聞』2025年10月5日、『毎日新聞』2025年10月5日)。麻生派の支持が高市の勝利に重要な役割を果たしたことは間違いない。こうして高市早苗新総裁が誕生する。